大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和39(オ)151 判決

主 文

原判決を破棄し、本件を福岡高等裁判所宮崎支部に差し戻す。

理 由

上告代理人江川庸二の上告理由第一点について。

原判決は、上告人において本件係争地が合筆前の旧ab番c号の土地の一部であ

つて上告人の所有に属すると主張する根拠は、旧ab番c号の土地を含む旧児湯郡

d村aの官林図(甲第四号証はその写である。以下単に官林図と称する。)による

ものであるところ、上告人の右主張を是認するためには、(一)官林図が現地を特

定できるだけの正確性、精密性を備えていること、(二)官林図に表示する土地(

本件係争地をも含めて)が国有地であること、この両者の要件を具備することが必

要である旨判示したうえ、甲第四号証には、右にかかげる(一)の要件を欠いてい

て、(二)の要件を具備するかどうかを判断するまでもなく、官林図に基づく上告

人の主張は失当であり、かつ、その余の証拠によつても、上告人の主張事実を認め

るに足る証拠がない旨を説示し、上告人の主張を失当として排斥し、上告人の控訴

を棄却していることは、その判文上、明らかである。

しかし、上告人が本件係争地を自己の所有に属するとして主張するもつとも重要

な根拠たる官林図について、原判決が本件係争地との同一性を認めがたいとする旨

の判断は、そのまま肯認しがたいものがある。�

すなわち、官林図の写である甲第四号証について、その測量起点が不明で、かつ、

各定点間の方位、角度の記載を欠き、その距離も不明確であることは、原判決の説

示するとおりであるけれども、甲第四号証の記載によると、右官林図(の写)は、

方向指図を示したうえ、二、五〇〇分の一で作成されていること、本件係争地の隣

接地番たる字ef番地、g番地および字a上の墓所の存在などについて記載がある

ことなどがうかがわれるうえに、本件係争地の隣接地番との凹凸の状況が上告人が

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原判決添付図面において主張する本件係争地とその隣接地番とのそれと非常に酷似

していることがうかがわれる。さらに、このような本件係争地の隣接地番との凹凸

の形状の類似性は、成立に争いのない甲第二号証(宮崎県庁備付社寺境内実測図)

に表示されている本件係争地に該当する部分たる「引渡シ地ノ内」の箇所の形状お

よび墓所の位置とも酷似していることがうかがわれる。�

以上のように考察すると、官林図(甲第四号証参照)において前述した部分(な

お、甲第二号証についても同様である)は、本件係争地と酷似し、右部分は、本件

係争地に合致すると判断するのがむしろ相当であり、したがつて、官林図でもつて、

本件係争地は十分に特定しうるものといわなければならない。�

もつとも、訴訟となつた現在、本件係争地は、原判決添付図面のごとく、基点・

方位・角度・距離が厳密に表示されているが、このような本件係争地の正確な確定

は、原判決および一件記録によると、上告人が本件訴訟のためにわざわざ測量させ

た結果であることが認められるのであり、このような測量の結果に基づく本件係争

地の正確な確定と同様な正確精密性を具備しなければ、官林図によつて本件係争地

を特定しえないと解するのは相当でない。�

ところが、原判決は、この点について、本件係争地が方位・角度・距離が正確精

密に測量された線によつて囲繞された土地であるから、官林図も同様正確精密性を

備えていなければ両者の同一性の認定は不可能である旨説示するけれども、このよ

うな考えは、一定の地域の所有権確認の訴について、証拠書類に関してまで、不当

に、判決主文と同様な正確精密性を求めるもので、不能を強いるものといわなけれ

ばならず、採用しがたい見解というべきである。�

しかるに、原判決が、右と異なる見解に立つて、官林図をもつて本件係争地を特

定しえないことを理由として、右官林図に表示されている本件係争地に相当する部

分について国有地に属するかどうかについて、明確に判示することなく、右官林図

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を主たる根拠としてした上告人の主張を排斥したことは、失当というべきである。�

そして、右官林図は、上告人の本訴請求においては、重要な証拠であることは、

前段説示するところから明らかなところ、原判決が右官林図を前述の理由をもつて

排斥し、その他の要件事実の存否について判断を加えることなく、その証拠力を否

定したのは、結局、重要な証拠について、判断をあやまつた違法があり、その結果、

審理不尽の違法をおかしたものというべく、論旨は、結局、理由あるに帰する。�

よつて、本件について、さらに原審をして審理させる必要があると認められるか

ら、その余の論旨に対する判断を省略し、民訴法四〇七条一号に基づき、原判決を

破棄して本件を原審に差し戻すこととし、裁判官全員の一致で、主文のとおり、判

決する。

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 五 鬼 上 堅 磐

裁判官 石 坂 修 一

裁判官 横 田 正 俊

裁判官 柏 原 語 六

裁判官 田 中 二 郎

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